NOTE

2023.03.19

尾鷲トレイル ”一撃”①


皆さんは「尾鷲トレイル」をご存知でしょうか?

三重県尾鷲市の市街地をグルっと囲むようにつながる尾根道、全長約40km、累積標高差4000mといわれる県内屈指のハードトレイル。

それぞれの山頂からは海の見える山特有の気持ちの良い景色が広がる、厳しくも楽しいロングトレイル。

山を愛する地元民の方々の情熱が10年もの歳月をかけて開拓し、この「尾鷲トレイル」を1本の道として切り開きました。

「*上記、尾鷲トレイルローカルマップ (価格1000円・税込み)〈発行:尾鷲商工会議所女性部〉は店頭でも販売しております。」

そんな「尾鷲トレイル」の起点から終点までを一気に踏破するチャレンジを”一撃”と呼び、ここ数年の間にも著名なトレイルランナーの方達が走りに来られていたりと、その「タフさ」からジワジワと名が知れ渡ってきている。

そんなタフなトレイルが自分の住んでいるすぐ近くにあることを知った時からいつか挑戦してみたいという気持ちに駆られ、2023/03/10にようやくトライすることができました。

結果、想像を絶するタフなコースに何度も心折れそうになりながらも、なんとか12時間18分という時間をかけて完走。

僕にとって今回のトライは距離も累積標高も今まで経験したことのない未知数の世界。

挑戦するにあたって「果たして自分の足は持つのか?」と不安も大きかったけど、自分ができるかどうかわからない挑戦をする時はいつも特別な緊張感があり、この緊張感がいわゆる非日常感というやつで、このワクワクとドキドキが入り混じる感情を味わいたくてハードな挑戦をする。

ちなみにこれくらいの強度のトレイルを軽々走ってしまうような人たちも、もちろん世の中には少なからずいます。けど僕にとってはギリギリ限界の挑戦で、そういった挑戦は何か自分の中で変化や成長を感じさせてくれる。

それに「自分の身体はどこまで持つのだろう?」という身体的な探求だったり、ウェアやギアの性能を感じたりと人体実験的な要素もあって面白い。

そんな非日常的な楽しみをたっぷりと味わせてくれるのが僕にとっての「尾鷲トレイル」でした。

この挑戦に同行してくれた二人と僕を含める3人の12時間の旅を振り返ります。

写真が多くちょっと長くなりそうなので前半と後半に分けます。ただ、後半は疲れすぎてゾンビ状態だったのであまり記憶もないし写真も少なくなりますが…

 

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起点は長楽院というお寺からになり、程なく行ったところ、猪鼻水平道(いのはなすいへいどう)の入り口に尾鷲トレイルの看板が現れます。(この付近に狭い駐車スペースがありますが車高の高い車でないと出入りできない道になりますのでご注意ください。)

今回、車2台で現地に向かい、先に終点に車を1台デポしてから出発しました。

 

「尾鷲トレイル」ここからスタート。

 

 

AM5:40 まだ辺りは暗く、吐く息が白く濁る。同行していただいたお二人のライトが眩しい。ヘッドライトをつけてスタートするのってなんかワクワクする。

 

 

約1キロごとに「尾鷲トレイル○/37」の看板が立っていて道迷いの心配は少ない。この数字が確実に進んでいることを教えてくれるのでモチベーションにもなる。ただ、後半はいつまでたっても数が進まず泣きそうになる。

 

 

 

スタートしてすぐの猪鼻水平道は起伏が少なく気持ちよく走らせてくれます。

まだ陽が上がる前、肌寒く冷え気味の体を温めるのにちょうどいい。

しかし、スタートしてから1キロほど進んだところで忘れ物(※終点にデポした車のキー)に気づき、きた道を引き返す。

早い段階で気づいたのが幸い。足早に引き返す。(あぶなかったー)

 

 

 

 

AM6:40 引き返してきた頃、辺りはかなり明るくなっていた。海面が穏やかで綺麗だがスタート遅延。この時はまさか完走まで12時間もかかると思っていなかった。(予定は10~11時間で走り切るつもりでした。)

 

 

気を取り直して…猪鼻水平道を進み登山口が見えてきます。初っ端から急こう配の木段。

まずここから、熊野古道でもよく知られる名所、「おちょぼ岩」→「天狗倉山(てんぐらさん)」→「便石山(びんしやま)」を目指します。

 

 

AM7:10 おちょぼ岩(471m)からの景色。朝日が気持ちいい。この土地ならではの素晴らしい眺め。

 

 

7:30 「天狗倉山(標高510m)」尾鷲の街が一望できる。写真には写ってないが対岸の端っこがゴール。遠くに見える稜線はずっとギザギザしていて、この時は「キツそうだな~」くらいにしか思っていなかった。

 

 

8:20 こちらが有名な「象の背」。「便石山(599m)」のピークからすぐの絶景スポット。ここまでスタートから2時間40分ほど。まだまだこの時は元気です。

 

余談ですが、ここまで来るのに3時間弱かかっているので2〜3回ほど補給を入れてます。その中で今回新しく取り入れた「ライスピュレ」が調子良いです。

その名の通りお米が原材料となっており、咀嚼して食べる栄養補給食。水分が少し多めの「ういろう」みたいな食感で、疲れていても食べやすく味も美味しい!後活動時間が長い時はレギュラー補給食になりそう。店頭でも扱っていますのでぜひ食べてみてほしい。ちなみに今回の完走予定時間が10〜12時間ほどを想定していたため、水を2L、ジェルやこのライスピュレなど合わせて補給食は多めに持ちました。(が、足りませんでした…。このことに関しては後述します。)

りんごとはちみつ味。お米に合うのか?と思っていたけどめちゃくちゃ美味しい。その他にみたらし、青梅、巨峰があり、好みはあれどハズレなしの美味しさ。1つで100kcalとカロリー計算もしやすくなっている。

 

 

 

 

話を戻します。

便石山から次のポイント「何枚田(なんまいだ)分岐」を目指す。この区間は下り基調で良いペースで動けます。

気持ちよく走れる区間も。

ただ、下りもなかなかの勾配なので飛ばし過ぎに注意。後半になって脚に効いてきます…

 

 

 

矢所峠(やところとうげ・361m)を越えて

 

 

 

8:45 何枚田分岐に到着。ここからが尾鷲トレイルの核心部。最奥部で最高峰、高峰山(たかみねやま・1004m)を目指し強烈なアップダウンを繰り返していく。

 

 

 

11/37。木の間から見えているのがおそらく高峰山。でかい。遠い。

 

 

 

先が霞むくらいの急登。こんなのが延々と繰り返されるのが尾鷲トレイル。

 

 

 

9:15 海路山(400m)周辺からの景色。視界が開けてくれると進んでる気がして気分も持ち上がる。

 

 

 

少し進んだ所の泉展望台分岐。「尾鷲トレイル」のマーキングは“オレンジテープ“でとても分かりやすくマーキングしてあり、ほぼ迷う心配がありませんでした。ただここの分岐で、写真奥に見えるように似た色(一緒?)のテープがあり、同行者の方が以前に間違って下りてしまったらしい。基本尾根に沿って進めば良いので、この道は右を行きます。

こっちです。

 

 

シダが茂っていますが、導線はしっかりしていて道は明瞭です。

 

 

13/37。海路山からこの辺りまで起伏が少なく走りやすい

 

 

小日向山までの急登。日も高くなってきてこの辺りは影もなく、この日気温は20度以上まで上がり暑い。しんどい!

 

まだまだ続くよ。

 

 

9:41 小日向山!

 

 

からの快適な下り~

 

 

からの激しい登り!

 

 

10:30 アップダウンほんと激しい。汐ノ坂峠。この辺り少し道分かりにくくてちょっとだけ藪漕ぎました。

 

 

11:05 碇石谷分岐。高峰山の文字が!

 

 

いよいよ尾鷲トレイル最深部に近づく。巨木が至る所に佇んでいます。人があまり近づかない原生林。時が止まっているかのような不思議な感覚。

 

 

こんな奥深いところでもトレイル整備がされていて同線ははっきりしているので道迷いの心配はほぼ無いように思う。それも景観を損なうような過度な整備ではないので雰囲気は抜群。

 

 

拝みたくなる存在感。

 

 

誘われるようにトレイルから延びるこちらの巨木は樹齢千年を超えると言われているそう。圧巻の迫力。

 

 

そんでまた高峰山目指してグイッと登る。20/37。すでに累積標高が2500mを越えている…僕自身ここまで累積標高を稼ぐのが初めてで、正直この時点ですでに脚も体も結構辛かった。

 

 

12:50 着きました!尾鷲トレイル最高峰、高峰山(たかみねやま・1004m)!ようやく半分!

しかしまだ半分。そう…まだ半分。

そしてこの時トラブル発覚。

この日20度を超える気温で暑かったせいもあり、同行してもらった方1名の水が早々に枯渇。僕と同じく2Lの水を持って出たそうなのですが、やはり人によって必要とする水分量は大きく異なります。

全行程の中の中間地点、ここからまだ約20キロ、1500mほどの高低差をこなすにあたって水無しはかなりマズい。

結果的には僕ともう1人の方の水分に余裕があったため分け合うことができたので事なきを得ました。単独ではなくグループで挑戦することの強みが出た場面。

もし1人(1人じゃなくても)でトライされる方がいらっしゃったら水分は絶対に余分に持っていただくことを強くおすすめします。尾鷲トレイルはほぼ尾根道で、水場は後半の八鬼山(やきやま)を越えるまで一切ありません。

水がなければ動き続けることが困難になるし、水分が少なくなってくると精神的に余裕もなくなり追い詰められる。今回がまさにそのケースで、この先の工程が見えにくい状態で水を節約しながら走ることに若干の不安とストレスを感じながら進むことになる。

エスケープルートもいくつかある尾鷲トレイルで“一撃“を行うにはメンタル的な強さが必要になってきます。その中で不安要素をなるべく取り除くための準備、特に水と栄養補給は不可欠です。これは今回のチャレンジでの教訓となりました。

水だけでなく補給食も余分に。パフォーマンスの維持、ハンガーノックや低体温症のリスクを避けるためにも自分の体力やコンディションを考慮してしっかり準備したほうが良い。

この半分の時点で僕の身体は正直かなりのダメージと疲労感。

水のこともあり、最悪エスケープも…と頭をよぎる。

だがこの高峰山は尾鷲トレイルの最高峰。つまりここからは下り基調になるはず!(と思っていた)

その甘い考えが、ここから地獄を見ることになる。

 

後半に続く

スタッフ 浜田

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